理念策定のプロジェクトには、対照的なふたつの失敗パターンがあります。
ひとつは、経営陣と外部パートナーだけで言葉を磨き上げ、完成品として発表するトップダウン型。言葉はきれいに仕上がりますが、社員にとっては「上から降ってきたもの」です。自分たちの手触りがないものを、自分の言葉として使う人はいません。
もうひとつは、社員の公募やプロジェクトチームだけで作るボトムアップ型。プロセスへの参加感は生まれますが、最後の役員会でひっくり返る危険と隣り合わせです。実際、「みんなで考えた案が経営に否定されて、プロジェクト自体が白けてしまった」という相談は少なくありません。せっかくの参加感が、最悪の形で裏返ってしまうのです。
うまくいくのは「往復」の設計
私たちがおすすめしているのは、どちらでもない第三の道です。
まず経営陣が素案をつくる。ただし完成させない。緩い段階で現場のキーメンバーにぶつけ、ワークショップで磨き、その結果を持ってまた経営陣と議論する。この往復を2〜3回繰り返してから、複数案の形で役員に選んでもらう——。
ポイントは「完成しきってから見せない」ことです。完成品への意見は批評になりますが、途中のものへの意見は参加になります。ある経営者の方は、経営で作った素案を社員との対話で磨くプロセスについて「上から降ってきたものではないと感じてもらうことが何より大事」と語っていました。

役員の意見は「複数案の段階」で挟む
もうひとつの実務的なコツは、役員が関与するタイミングです。最終案がひとつに絞られてから役員会に諮ると、返ってくるのは承認か差し戻しの二択になります。差し戻された瞬間、それまでのプロセスは全部やり直しです。
複数案の段階で役員に見せて、選んでもらう・混ぜてもらう。そうすれば役員も「決めた側」としてプロジェクトの当事者になります。発表のとき、経営が自分の言葉で理念を語れるかどうかは、この設計で決まると言ってもいいくらいです。
往復には時間がかかる。だから逆算する
この往復プロセスは、一直線に作るより時間がかかります。標準的には策定だけで3ヶ月前後。だからこそ、発表の場(周年・期首方針・経営会議)から逆算したスケジュール設計が欠かせません。
遠回りに見えて、発表後に「使われる」理念への一番の近道です。理念策定の進め方はサービス紹介(MVV・理念策定)で詳しくご覧いただけます。



